阿南市立橘小学校

Withコロナだからこそ

 昨年はどの学校もコロナに悩まされ、楽しみにしていたイベントなどが思うようにできなかった。しかし、橘小学校の児童たちはコロナに真剣に向き合いコロナ対策について自ら学び、この学びを生かしたコロナ対策を講じた体育祭を実際に行った。橘小学校では町探検や下校途中避難訓練など様々な防災活動をしており、そのなかで普段から疑問に思ったことをさらに突き詰めていくような活動をしている。そのような姿勢が今回の「withコロナ賞」初応募での初受賞という形として結果が出た。「withコロナ賞だからこそうれしい。」この言葉からは今までどれほどコロナありきの防災について頑張って学び、取り組んできたかが伺える。これからは,児童たちが学校にいる時だけではなく、家に帰っても学んだことが発揮できるような活動や、一年生の段階から防災についてふれていき大人になったときに災害に立ち向かっていける力を養成していけるような活動をしていきたいと強い思いが語られた。

 橘小学校はぼうさい甲子園に初応募ながら『withコロナ賞』を受賞した。 

 「withコロナ賞だからこそうれしい。」これは今も続くコロナ禍で、昨年、橘小学校の児童が「withコロナ」について真剣に取り組んだからこその言葉である。コロナについての勉強はもちろん,橘小学校という小規模校だからこそ、できる防災活動を自分たちで主体的に考え、地域の人たちにも助けていただきながら、活動を続けてきた。自分たちで頑張ってやってきたことの結果がこのような形で報われ、児童だけでなく地域の人たちも大変喜んでくれたとお聞きした。

毎年積み重ねてきた

 橘小学校では,毎年「着衣水泳」、「町探検」、「下校途中避難訓練」、「オリエンテーリング遠足」、「避難所運営学習」など防災学習を頻繁に行っている。
 橘小学校の防災学習は、児童が教えてもらうだけではなく、児童が主体となり、考え、行動している。橘小学校が避難所になるということから昨年度は、児童と教員,地域の方々と災害時の避難所運営に備えて、避難所運営学習を行った。
 また、コロナ禍ではあったが、様々な防災学習を児童と地域の方々と共に行うことができたそうだ。
 コロナに負けず、児童は防災学習を頑張っている。コロナ禍においても毎年行う防災学習を感染症対策もしながら進めていく積み重ねが、橘小学校の防災の強みである。

児童の疑問から生まれる防災

 昨年度は児童が自分の住んでいる地域を探検する「町探検」を十分に行った。町探検に行った際に、昔の津波被害を記してある津波碑を児童が見つけ、「これは何なのか」と疑問をもった。そこで、昔の昭和南海地震、チリ地震津波の被害を受けた橘町住民から直接話を聞き、自分たちの町の過去の災害を学んだ。

 この学習から児童は、自分の住んでいる橘町は被害をたくさん受けた町だが、こうして今もこの地域が残っている、たくましい町であることに気づくことができた。

 さらに、町探検の途中で児童は、避難場所は高台にあるけど道路が浸水したら,この地域は孤立してしまうのではないかというと疑問をもった。この疑問から、自分たちの町が孤立しないために学校の裏山を探索し、隣町まで出歩くことができる命をつなぐ道を自主防災組織の人と探検した。自主防災組織の人からは、ここはもっと崩れるかもしれない、体力もつけとかないといけないというアドバイスもいただいた。

 児童は、自分たちの町を探検することで、「ここってどうなんだろう」と、たくさん疑問をもち、探求していった。児童は,自分や家族,大切な人を守るために、自分たちにもできることについて考え、主体的に防災学習を取り組んでいっている。


児童が考えた感染対策での体育祭

 昨年度は修学旅行や遠足など楽しみにしていたイベントが次々となくなったが、そんな中でも、児童からコロナ禍でも楽しいことがしたいという意見が出た。そこで行われたのが「にこにこ橘っ子体育祭」だ。6年生を中心に、今まで学んできた感染症対策を元にして、児童たちが自ら感染症対策を施した競技を考えた。全学年の子ができる対策を考え、体育祭を順調に進めた。例えば、リレーのバトンを音で合図をするという方法のものに変えた。段ボールを置いておき、走り抜ける前に段ボールを叩く。その音を聞いて段ボールの反対側にいる児童はスタートするというものだ。段ボール分の距離をとることができ、接触も避けることができる。そのほか、軍手の着用、座る椅子の距離を離す、応援は声を出さずに拍手などの対策を行った。コロナ禍でも新たな形で楽しもうという気持ちを行った体育祭だ。児童の心に残り、児童が主体的に感染症対策を行うことができ、より感染症対策の学びを深めることに繋がった。

他校とのオンライン交流

 地理的にも同じ沿岸部に位置し、南海トラフ巨大地震では同様の被害を受けると想定される、同一市内の津乃峰小学校と防災学習のオンライン交流会を2回行った。

 1回目は、それぞれの学校の防災学習の内容を伝え合った。コロナ感染症対策を講じた「にこにこ橘っ子体育祭」というイベントを開催した橘小学校からは、コロナウイルスの対策について調べ、分かったことをまとめたことや普段からしている感染症対策を津乃峰小学校の児童に伝えた。2回目の防災学習の交流では、お互いの学校で作成された防災マップやそれぞれの過去の災害から学んだことを共有した。

 橘小児童が作成した防災マップを含めたリーフレットは、今年度の地域の自主防災組織の防災新聞に掲載された。地域の人が改めて防災を考えるきっかけづくりとなり、大きな成果となった。

課題と今後の展望について

 橘小学校は南海トラフで津波災害が想定される地域に位置している。橘小学校自体は、高台に位置をしており、学校にいればある程度の安全性が確保できる状況にある。

 橘小学校では様々な状況を考えた防災教育に力を入れている。しかし、海に近い自宅に帰ったとき児童は、学習したことと同じことができるだろうか。自分で何ができるのか考え、すぐさま命を守れる行動がとれるだろうか。

 児童が、学校で学んだことを家で発揮することができるよう、どんな状況でも命を守れる素早い判断力と行動力を身につけていく防災学習がこれからの課題である。

 そのためにも、児童には、一年生からしっかりした防災意識と実践力を持たせる段階的な防災教育を展開していきたい。防災は楽しんで行うものではないが、感染症対策の学習で行ったように、正しく恐れることを大切にこれからも取り組んでいく。児童たちが大人になった時に、怖がらず、立ち向かっていける実践力を養いたい。

 これからも、未来へつながる、先を見据えた防災教育を継続していく橘小学校である。