こどもたちも教職員も防災が「あたりまえ」
東金特別支援学校は、10年以上前から防災活動にとりくんできた「老舗」だ。2011年に高等部の生徒会役員が東日本大震災の被災地を訪れた。その時、被災者に、「自分たちに何ができるのだろう」とたずねると、「防災を『あたりまえ』にして欲しい」と言われた。これがきっかけとなって、生徒会が中心となって「あたりまえ防災隊」を結成した。メンバーは小学部、中学部、高等部の希望者で、全校児童生徒147人の1割強が参加している。教育課程に位置づけられているわけではないので、活動は昼休みなどに行っている。
教職員の防災意識も高い。校務分掌には「防災教育・安全指導」の部署があり、毎年4月1日には教職員向けの研修を行う。危機・安全マニュアルに従って緊急時の対応を全員で確認する。「防災教育・安全指導」の今年のメンバーは小学部、中学部から1人ずつ、高等部と寄宿舎からは2人ずつの、合計6人。こどもたちの「あたりまえ防災隊」の担当部署でもある。
教職員とこどもたちが二人三脚で防災活動を「あたりまえ」に進めている。
ぼうさい甲子園の受賞が決まった時、吉報をまず「あたりまえ防災隊」の児童生徒に伝えた。実物の賞状を見てこどもたちも実感がわいたのだろう、とても喜んだ。コロナ禍で全校集会は校内放送で進めているが、そこで表彰状を持つあたりまえ防災隊の写真を全校生に紹介した。多くの制限を受ける中での活動が評価されたことがうれしさを増してくれたという。
あたりまえ防災隊の校内危険個所チェック
児童生徒による校内安全点検を今年から実施した。あたりまえ防災隊のメンバーがチェックリストを持って教室を回り、危険個所を見つけると担任に伝え、改善してもらう。どの教室も毎月1回は点検を受ける仕組みだ。例えば、掲示物を留める画鋲は抜け落ちないように上からテープを貼るルールにしているが、それができていない場合もある。こどもたちが担任に指摘していく。高い棚の上に大きなものを置いている場合はおろしてもらう。机やいすのがたつきなど、日頃の学習環境の整備に関わる点検も行う。時には、担任があえて危険個所を演出しておいて、それに気づいたこどもたちをほめることもあるようだ。先生と生徒が有意義に防災を推進している様子がうかがえる。
制限がある中での防災活動
これまで、東金市の防災フェスタは消防防災課と連携してあたりまえ防災隊が運営に参加してきた。ブースを受け持って防災教育を広める活動も行ってきた。地域の企業からも発表の場をもらい、新聞紙スリッパの作り方を伝えたり、「あたりまえ防災体操」を一緒に行ったりしていたが、今年度は全て中止となった。そこで今年の避難訓練は小学部、中学部、高等部が別々に実施する分散型にした。学校では学部ごとに避難場所を設定しており、こどもたちはそれぞれの避難場所に避難した。
防災啓発動画を2本撮影した。「おかしもち」を紹介するビデオでは、こどもたちが避難のポイントを具体的に説明している。視聴すると防災が学べる学習教材だ。もう1本のビデオは昨年の防災ウォークラリーの様子を編集したもので、来年は実施したいとの願いも込めた。動画はこれからアップロードして家庭でも視聴してもらう予定だ。
例年行ってきた地域に出向いての防災活動はできなかった。
学校行事も制限されたが工夫も忘れずに
コロナ禍で、運動会はできず、県の駅伝大会は中止となった。代わりに近隣の特別支援学校とのリモート駅伝大会を実施した。駅伝では参加校が同時間にスタートして自校のコースを走り、その様子を映像で共有した。
修学旅行は実施できたが、中学部、高等部は県外宿泊ができず、日程も1泊に短縮となった。例年、中学部は2泊3日の日程で那須塩原に行っていたが、今年は学校に1泊した。防災をメインとしたわけではないが、避難所体験的に教室で寝た。夜の学校はなかなか怖い雰囲気がある。お化け屋敷的な冒険行事をしたが、そんな非日常を楽しんいるこどもたちもいた。高等部は大阪方面で2泊していたが、今年度は県内の1泊とし、鴨川シーワールドや木更津でのショッピング、マザー牧場など、県南部での活動を楽しんだ。小学部は県内1泊の修学旅行が日帰りとなった。こどもたちは、最初はがっかりしていたが、受け入れてくれたようだ。
文化祭は縮小開催とした。例年は地域や放課後デイサービス、近隣の小中学校に呼び掛けていたが、今年度は保護者だけに制限した。中学部と高等部は例年通り作業製品販売会を開き、小学部は、従来は体育館を遊び場にして楽しく遊んでいたが、今年度は各教室で発表会を開き、保護者が参観した。
スクールバスで通学するこどもが多いが、「密」を避けるために、3台だったスクールバスが今年は4台に増えた。もちろん、同乗する介助員も増員となった。
発想を変えてとりくんでいきたい
来年はいつもの活動に戻れるように願っているが、オンラインのとりくみを進めるなど、発想の転換も必要だ。
災害はいつ発生するかわからない。特別支援学校だけではなくすべての校種で防災教育が広がっていけばよいと思う。千葉県は特別支援学校が防災教育に熱心だが、まだ横のつながりが弱い。千葉県内はもとより、他の都道府県とのつながりも作っていきたい。
「おかしもち」
お:押さない
か:駆けない
し:しゃべらない
も:戻らない
ち:近寄らない