南海中学校の防災学習活動をNSP(Nankai Survival Project)と言う。「地域の絆は防災の力」を合言葉に、生徒たちが地域に出てお祭りなどの地域行事に参加し、防災の活動もリードしてきた。NSP実行委員会が行う「防災俄(にわか)」は南海中学校の代名詞と言える寸劇。生徒たちがストーリーを考え、面白おかしく防災の心構えを伝えている。 「防災フェア」は南海中学校を会場に地域住民や小学生、保育園児が参加するイベントで、中学生は体験だけでなく、自主防災組織等の関係機関の手伝いや説明する側に回る。消防や警察、自衛隊の資機材を持って参加してくれる。本年度、この行事は新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかった。 「地域一斉津波避難訓練」も毎年2学期に実施してきたが、新型コロナウイルス感染症の影響でできなかった。ただ、避難の力は必要であり、今年度は学校独自に自宅から近くの避難場所への「在宅時避難訓練」を実施した。 在校中の津波避難対策について、学校にも非常持ち出し袋を置いていたが、避難するときに慌てて忘れる危険性がある。そこで、今年度から、学校近くの避難場所(向山)に防災倉庫を置き、そこに持ち出し品を保管することにした。限られた予算で小規模なとりくみだが、今後拡充していこうと考えている。
防災俄
地域一斉津波避難訓練
地域一斉津波避難訓練
防災フェア
地域行事への参加

高知市立南海中学校

NSP:南海サバイバルプロジェクト

 南海中学校の防災活動の主体はNSP(Nankai Survival Project)。全校生徒でとりくんでいる防災学習・活動の名称だ。NSP実行委員が中心となって活動を計画・準備・実践している。
 生徒たちは『まもれ高知(ふるさと)~地域の絆は防災の力~』を合言葉として、地域へどんどん出ていき、どろんこ祭りや長曾我部まつりなどの地域の行事で活躍している。

 防災活動では、地域の避難場所を丁寧に調べ上げ、実際に地域の方々と避難経路を歩いてその特徴などをマップにまとめた。
防災フェアは地域の方々や幼稚園児、小学生を学校に招き、起震車体験、防災展示、ロープワーク、煙体験、炊き出しなどを行う一大行事だ。中学生は説明、案内役になって日頃の学習の成果を披露する。消防や警察、自衛隊も車両や機材を持ち込んで協力してくれている。

 「防災俄(にわか)」は室戸市の佐喜浜地区に伝わる国・県の無形文化財である伝統芸能を参考にして、生徒が考案した風刺劇だ。笑いを交えて防災の大切さを訴えている。
 これらのとりくみは、ぼうさい甲子園でのぼうさい大賞(2017年)をはじめ、防災教育チャレンジプランでの特別賞(2015年)、高知こどもファンドベストピカッと賞(2015年)など、多くの賞を受けている。

コロナ禍で地域行事ができない

 ところが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、地域に出ていく行事ができなくなった。
 4月第1週に開かれたどろんこ祭りは縮小となって参加できず、5月の長曾我部祭りは武者行列や吹奏楽部の演奏、防災俄の上演で参加してきたが、中止となった。

 防災フェアは1学期に開催してきたがこれも中止した。各地の自主防災会が地域の活動に防災俄を披露して欲しいと要請してくるが、これは個別判断で参加、不参加を決めている。
 結局、1学期は防災活動や地域活動ができなかった。

 2学期は地域一斉津波避難訓練も予定していたが、これも中止となった。昨年は860人以上が参加してくれたが、参加者には高齢者が多い。感染症罹患と重症化への心配があった。

在宅時避難訓練

 地域全体での一斉避難訓練はできなくても、実際の地震発生時には生徒たち一人ひとりの対応力が必要だ。10月30日(金曜日)の5・6時間目に中学生だけで「在宅時避難訓練」を行った。その準備として、9月末に防災の授業を行った。家にいる時に地震が発生したらどこに避難するかを、生徒が作成した避難マップに基づいて決める。各自の自宅近くの避難場所がわかったら、それぞれの避難場所ごとに避難する生徒の名簿を作成した。

 訓練当日は、まず避難場所ごとに体育館に集合して、担当教員を中心に訓練の打ち合わせを行う。各自の非常持ち出し袋の中身も点検する。その後、生徒全員が下校する。在宅中の午後3時に地震が発生し、生徒たちは5分後には家を出てそれぞれの避難場所に徒歩で集合する。避難する際には各自の持ち出し袋を持ってきて、その内容を教職員が点検する。現地で点呼し、解散するというシナリオだ。

 学校にいる時の津波避難訓練は学期に1回~2回行ってきた。学校近くの向井山への避難訓練は、今年度はまだできていないが、体育の時間に徒歩で登ってきた。11月には実際の避難訓練を行う予定だ。

避難場所に備蓄倉庫を置いている

 学校にも生徒各自の避難用の持ち出し袋を準備してきた。PTAの予算で5年保存のペットボトルと防寒用のカッパを準備している。ただ、実際の地震時に慌てずに持ち出せるか不安があった。そこで今は避難場所に倉庫を建てて保管している。水とカッパ、ブルーシートなどだが、まだ十分な量ではない。今年は非常用のシートを追加する。これから毎年、備蓄を増やしていきたい。難点は倉庫が小さいこと。予算を確保して大きな倉庫を購入したい。来年度は、水・食料の購入費用(300円)を防災費として保護者から徴収し、購入する予定を立てている。幸いにして、使わずに済んだ場合は、卒業時に自宅に持ち帰ることにする。

NSP活動を徐々に再開

 NSPの活動も徐々に再開していく。今後、近隣の浦戸小学校、長浜小学校に出前授業を行い、防災俄(にわか)も披露する予定だ。ただ、保育園児との交流はまだ再開できていない。例年は防災フェアや体育祭、文化発表会に参加してくれていた。体育祭では宝さがし競技を一緒に行い、文化発表会では歌やお遊戯を発表してくれたが、今年はできなかった。

 新型コロナウイルス感染症は依然として収束する気配はなく、これまでに経験したことのない状態が続いている。
 本校学校行事等への保護者の参観や生徒たちの地域行事への参加については、新しい生活様式を基本とするとともに、安心・安全な学校生活や地域での生活が営めるよう、制限もかけながら対応していきたい。そして、特効薬の開発や社会の状況等も見定めながら、できる範囲で防災活動に取り組んでいきたいと考えている。

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