特別支援学校のコロナ対応はとても細やかな配慮が必要だ。特に医療的なケアが必要なこどもや病弱な子どもにとって感染は命取りになりかねない。小学部では「感染症対策のため出席停止」の児童が16%を占める。登校している児童に対し、手洗いやマスク着用、摂食指導の対応など、先生方の細やかな指導には苦労がいっぱいだ。 4月〜5月の休校中は教科や防災の学習教材をYouTubeで配信してきた。子どもたちが楽しんで学べるように工夫を凝らした教材を作った。Wi-Fi環境のない子どもたちのためにDVDでも届けたている。現在は遠隔システムを活用して他県の学生や特別支援学校との交流も進めている。 これまでは防災の学習は特別活動や総合的な学習の時間を活用して行ってきた。さらに委員会活動で防災委員会が先頭に立って活動してきたが、今年はその場が激減した。そんな状況でもできることを模索している。防災の日(毎月11日)を継続し、子どもたちが巨大ポスターを描いて意識を高める取り組みを進めている。お昼の放送を活用し、防災啓発に取り組んでいる。
オンライン防災体験プログラム
防災委員会が作製したポスター
静岡大学とのオンライン防災学習
限定公開でYouTubeに防災学習をアップ
防災委員会が作製した宝石石鹸

埼玉県立日高特別支援学校

特別支援学校の事情

 全国へ一斉休校の要請が出されても埼玉県では3月も学校を続けた。特別な支援を必要とするこどもたちの事情を考えると、簡単に休校とするわけにはいかなかった。

 4月は始業式、入学式を行い、それ以降は週1回の登校日を設けた。クラスを半分に分けて1日交替で登校する。小学部の日、中学部の日、高等部の日を設定した。午前中を学校で過ごし昼食を済ませてから帰宅した。

 5月からは完全休校になった。ただ、保育預かりもしていたので、各学部に1人か2人は学校に来ていた。残りのこどもたちは福祉サービスにつながっていた。

いろんな工夫で乗り切った

 休校中の学習補助教材の提供には、楽しい内容にしようと絵本や歌遊びなどを取り入れ、主にYouTubeを本校のみの限定公開で使用した。教科学習の補助教材は高学年には昨年度の復習を、低学年には楽しく学べるようクイズ形式で作成した。

 休校中も防災教育は実施した。例えば、災害用伝言ダイヤル(171)の体験ができる動画を作ってYouTubeにアップし、家族で体験してもらった。

 生徒は映像を楽しんでくれたみたいだ。ただ、スマホの小さな画面でしか見られないこどもたちや家庭にWi-Fiのないこどもたちもいたので、要望により映像をDVDにコピーして送った。

登校する子どもが減っていろんな影響が

 6月になると最初の3週間は分散登校とし、19日から通常の登校に切り替えた。日々、細心のコロナ対策をしながらの学校生活が再開された。

 登校は感染リスクを伴う。こどもを学校に行かせたくない家庭は少なくない。特に小学部で多い。基礎疾患のある子どもにとって感染すると命の危険もあるという不安からだ。重度の障害を持つこどもたちや医療的ケアの必要なこどもたちのクラスは半分程のこどもが登校していないケースもある。年齢が上がると体力もついてくるので登校率は高まる。新しい学習指導要領によって学習内容や指導体制を見直してきたが、出席状況によって、集団での学習活動が困難になっているケースもある。

 特別支援学校ではこどもたちの摂食支援が必要だ。普段はひとりの先生が同時に1〜2人のこどもたちの摂食指導をするが、コロナ禍ではそれができない。「密」を避けなければならず、複数のこどもを同時に摂食指導できないからだ。しかし新型コロナウイルス感染症対策のため「出席停止」しているこどもたちがいるので、他のグループの先生の手伝いをもらいながら1対1での摂食指導がなんとか可能になっている。今年度の学校生活において、これまでの指導が継続できないこともあり、先生たちももどかしい思いをしている。

映像や遠隔システムの活用

 本校がこれまで続けてきた、地震から身を守るダンゴムシのポーズを昨年度から止めた。ダンゴムシのポーズの危険性を説明するアニメーションのスライドを作り、家庭で見てもらい、授業でも活用した。

 コロナ禍になって県内の学生による防災の対面授業は停止中だが、遠隔システムを使い始めてから遠くの大学や他府県の特別支援学校との連携ができるようになった。大学の学生が障害児のことを十分理解できていない場合もあり、こどもたちの実態に合わない提案もあるが、何度もすり合わせて修正しながら進めている。他県の特別支援学校とも教員間の交流を始めた。お互いの事例を紹介し、より良いものにしようと考えている。

防災活動の場をどう確保するか

 防災教育は主に小学部が縦割り方式で進めてきた。1、2年生は生活科や特別活動、他の学年は総合的な学習の時間を主に活用している。

 2か月にわたる休校で中学部と高等部は授業時数の確保が最優先である。小学校では授業の持ち方や内容を工夫して何とか対応しているが、中等部と高等部ではそれが難しく授業時数をこなしていくのに精いっぱいだ。全体的に防災の学習時間の捻出が課題だ。

 委員会活動の一つとして防災委員会がある。小学部4年生から高等部3年生までの児童生徒が放送、防災、図書、保健の4つの委員会に分かれる。今年は防災に17人が集まった。継続して入るこどもが増えている。

 防災委員会も十分な活動を再開できているわけではない。活動の場である文化祭や町のイベントがなくなっているのも一つの理由だ。去年はキャンドルナイトのイベントに手作りのキャンドルを送ったが、今年はキャンドル作ってもイベントがない。

 10月から活動再開できた防災委員会で、固形石鹸を作って手洗いの大切さを伝えようとしている。石鹸は家にも持って帰った。たくさん作って少し余ったので、どう活用するかを防災委員会で検討している。現場実習でお世話になった事業所にお土産として持って行く案が出てきている。

 他にも毎年育てている神戸の「はるかのひまわり」を使った活動として、市のひまわり迷路に収穫したヒマワリの種を、メッセージを添えて渡そうと計画している。

 学校では、毎月11日を防災の日としている。コロナ禍で休止状態だった防災の日を再開させた。今までは、防災の日に防災委員会のこどもたちがクラスを訪問して啓発活動をしていた。今は感染症防止対策のため積極的な交流ができないため、巨大ポスターを作って、目立つ場所に貼り出してアピールしている。その日のお昼の放送でも防災委員の活動の場を作り全校へ防災への意識づけをしていく。

コロナ禍でもできる防災活動を模索していきたい。

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