Kumanoサポーターズリーダーが活動を引っ張る。地域の高齢者宅を訪問しての安否確認、高齢者向けの体操動画の配信など、活動の視点は常に地域と福祉にある。社会福祉協議会の後押しもあって、配食サービスに手紙を添える活動も継続してきた。 昨年度は「AEDシート」の開発に着手した。AEDを使用するとき、胸を露出することへの抵抗から、男性と比べると女性の使用率が低いことを知って危機感を持った生徒たちは、女性でも使いやすいようにと、胸を覆うAEDシートを開発した。試作品を地元の消防署に持ち込んでは消防士の意見を聞き、改良を重ねた。町内にはAEDが72か所設置されているのはすでに調査済みだ。今年度はそのすべてにAEDシートを寄贈する予定だ。 新型コロナ感染症でできなくなったこともあるが、遠隔会議システムで遠くの学校とつながっている。双方の活動を紹介し、学びあい、活動を広げていきたい。
高齢者の安否確認ハートフルチェックボランティア
第68回全国高等学校家庭クラブ研究発表大会 クラブ員奨励賞
AEDハートフルシートの製作
AEDシートのヒアリングと改良
AEDシートの配布活動(地元の幼稚園)

和歌山県立熊野高等学校

Kumanoサポーターズリーダー

 ぼうさい甲子園では毎年のように受賞してきた。活動を引っ張っているのは「Kumanoサポーターズリーダー」だ。「地域に根ざし、地域に貢献する高校生リーダーを目指して」をモットーに、ボランティア活動を積極的に行ってきた。発表の場はぼうさい甲子園だけではない。「SDGs Quest みらい甲子園」や「ボランティア・スピリット・アワード」、「全国高等学校家庭クラブ研究発表」などでも注目を浴びている。現在3年生11人、2年生14人、1年生16人で活動している。部員は女子が中心。男子は2年生の4人だけだ。

 活動では地元とのつながりを大切にしてきた。3年前、エコノミークラス症候群の予防のために「防災エクサダンス」を考案した。3,000世帯にDVDで配布した。地元上富田町のHPにもアップされている。

長期休校を乗り越えて

 熊野高校は、和歌山県の南部、西牟婁郡上富田町にある。学年には総合学科が5クラス、看護科が1クラスある。地域は南海トラフ巨大地震と津波だけではなく、洪水や土砂災害の危険もある。

 2月27日の新型コロナウイルス感染症による休校要請を受け、28日の卒業式の予行をそのまま本番として実施した。といっても卒業証書を授与するだけの簡単な卒業式だった。3月2日(月曜日)に生徒たちに事情を説明し、休校に入った。

 休校中の学習は、一部動画を使ったりしたが、メインはプリント学習だった。総合学科は選択科目がたくさんあり、生徒ごとに時間割が違う。当然、とりくむべき課題プリントも生徒ごとに違う。先生方が座席表を見ながら教室の机上にプリントを置いていき、担任が集めて封筒に詰め、郵送した。

 6月1日からは分散登校を開始し、2週間経って平常の授業に戻った。

女性が使いやすいAEDの工夫

 現在は、昨年度のぼうさい甲子園で高く評価された「AEDシート」のとりくみを進めている。AEDは倒れた人の上半身を裸にして使用する。女性の場合、胸を露出することへの抵抗感から、男性と比べるとAEDの使用率は低いと知って、その対策を考えて発案したのがAEDシートだ。昨年度から半年以上かけて開発してきた。地元の消防署に試作品を持ち込んで意見を聞き、何度も改良を重ねてきた。現行モデルは5代目になる。地元企業もプリントで協力してくれている。水を弾く素材をシートに使い、AEDのパッドを貼る場所と心臓の位置にはワッペンをつけた。たたんで袋に入れると折り畳み傘程度の大きさになる。

 製作は簡単には進まなかった。2月に最終試作品ができ、製作を始めようとしたときに長期休校が始まってしまったからだ。そこで、3年生11人がフェルトを持ち帰って、パッドと心臓位置のワッペンを作り、説明文を書いた。学校が再開された6月、それらを持ち寄って完成させた。

 上富田町では、AEDが72か所に設置されている。昨年度、すでに調査済みだ。今年度はその71か所すべてにAEDパッドを寄贈する予定だ。10月上旬、まず、幼稚園と小学校に寄贈した。

地域福祉の視点が大切

 熊野高校のとりくみは福祉の視点を大切にし、地元の社会福祉協議会とのコラボレーションも進んでいる。社協は月に2、3回、独居老人への配食サービスを行っている。生徒たちは食事にメッセージを添えた。4年前から始めたとりくみだ。月に1回、80世帯分のメッセージを手書きしている。

 高齢者が運動不足にならないようにと、自宅でできる上半身体操の動画をSNSにアップした。これまでは、高齢者宅を訪問して安否確認と交流をしていたが、それができなくなったので考えたアイデアだ。

被災を忘れず、地域の災害の歴史から学ぶ

 活動のきっかけは、2011年(平成23年)の紀伊半島大水害までさかのぼる。在校生が一人、亡くなったのだ。今でもその日には、全校生で黙とうをささげている。

 生徒たちは地域の災害の歴史も学んでいる。明治22年には紀伊半島で1,000人が亡くなる災害があった。古文書を判読する専門家が協力してくれている。

 昨年度まで、生徒たちは地域を回って高齢者の安否確認をしてきた。1時間で4軒回る。1件当たり15分の滞在だ。でも、昔話が始まると1時間ほど話し込むこともある。お年寄りは、地元を流れる富田川の水害を鎮めるための人柱の話などをしてくれる。

出来なくなったこともあるが

 1年生の「家庭基礎」という科目で、高齢者の安否確認や学童保育でのボランティアなど、サービスラーニングにとりくんできたが、今年はこれができない。

 これまでは週末はまちに出てボランティアをしていた。いろんな場所で発表もしていた。それができなくなって、コミュニケーションの力を磨く機会が減ったのが気がかりだ。

 広がりもある。対面での活動が制限される中、Zoomを使って県外の高校とやり取りをするようになった。AEDシートのとりくみや防災エクサダンスが県外に広がっている。

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