『かわせみ防災クエスト』ブレイクの予感
1.受賞の知らせを聞いて、どう思いましたか? こどもたちの反応は?
特別支援学校の実践は、周囲には伝わりにくい。そんな中で評価されたことがうれしい。受賞を知らせる電話を受けた事務職員がわざわざ教えにきてくれた。毎日新聞で報道されたが、記事に写真が写っているこどもが喜んで、周りのこどもたちに自慢げに見せていた。こどもたちが喜んでくれたのが一番うれしかった。
こどもたちにはまだ正式な発表はしていない。防災活動を引っ張ってきた防災委員会にも伝えていない。年明けの集会で伝える。ただ、教頭先生が新聞記事をあちこちに貼りだしたので、おそらくみんな知っているだろうね。
2.どんな活動を続けてきましたか?
防災活動は防災員会が中心になって行ってきた。今年の大きな活動はふたつ。ひとつは非常トイレの問題だ。学校の既設トイレに災害用非常トイレをストックしておくとりくみだが、これまではなかなかうまくいかなかった。
今回は、最初に別の授業を行った。高分子ポリマーをジップロックに入れて、中に水を注いでそれが吸収されていくプロセスをマジックショーみたいに見せた。こどもたちは触感に驚いた。きれいな紙やビーズなども入れておもちゃのように楽しんだ。触っているうちに、冷たくて気持ちいいなと言い出した。保冷材として活用すれば、夏は熱中症防止になる。体温調節が難しくて冬でも保冷材が必要なこどももいる。これで冷やせる。この水分吸収の原理がこの非常用トイレに使われていると教えた。
そして、災害用のトイレを学校のすべてのトイレに置いた。といっても、こどもたちが図工の時間や防災委員会で描いた絵で飾って設置している。おそらくこどもたちは、絵が飾ってあるぞ、としか思っていないだろう。こんなとりくみならどこの学校でもできるはず。
3.今年度の一押しの実践を教えてください
重度障害を持つこどもたちの防災教育がなかなか深まらなかった。同じ学習を繰り返すのではなく、切り口を変えたら発展するかも、と思った時に、クエストをひらめいた。「マッシュ&ルーム」という団体とつながって、「かわせみ防災クエスト」を開発した。
こどもたちはタブレットをもって校内をめぐり、ミッションを見つけて答えていく。難易度は学部で変えた。予告編を作ってこどもたちの関心を高め、招待チケットも配った。音楽、映像は「マッシュ&ルーム」がノウハウを活かして高いクオリティで作ってくれた。
堅苦しく防災を勉強するのではなく、ゲーム感覚で学べる。例えば、「35秒間ヘルメットをかぶろう」といった出題もある。35秒を図るためにタイマーを持参したこどももいるといいう。こどもたちが先生をたきつけて一緒に回る姿も見られる。
休み時間や昼休みを使って自由に回れるようにした。車いすのこどもが先生と一緒に回る。呼吸器とモニターを離せないこどもが、立位台を使って回る。知らない場所に行くと不安になって心拍数が上がってアラームが鳴るこどもが、楽しいのでかえってリラックスして、アラームが鳴らないのだという。そして、そんなこどもたちと一緒に、先生が自主的に参加している姿が見られる。
4.現在の課題と、将来、とりくみたいことを教えてください。
このゲームを広げるチャンスがあれば、他の特別支援学校とミッションを作りあって、共有したい。普通校との交流もできると思う。
もっと面白い授業を作りたい。コロナ禍で学校に来れていないこどもたちが参加できる防災教育を開発したい。コロナ禍が終わってどんな授業をしているか、楽しみだ。