「CHANGE~わが町の新たな光を求めて~」
1.受賞の知らせを聞いて、どう思いましたか? こどもたちの反応は?
受賞を聞いた生徒たちは、最初は「え?」という感じだったが、喜びがじわじわと湧いてきて、最後は「おお、すごい!」となっていった。3年間継続したとりくみが賞につながったことがうれしい。一緒に活動してきた地域の方も喜んでくれた。
2.どんな活動を続けてきましたか?
夏休みに高田松原から東日本大震災津波伝承館を経て避難所までの道を歩いた。陸前高田は津波の町のイメージが強い。あれから10年経って安全・安心なまちづくりを進めていることを発信したいという願いを込めてテーマを「CHANGE~わが町の新たな光を求めて~」に決めた。
本部に所属する生徒はリーダとして活動し、1班は体験の伝承、2班は高齢者が多い陸前高田の町をどう守るか、3班はコロナ禍での防災意識調査、4班は地元を元気にする活動にとりくんできた。
3.今年度の一押しの実践を教えてください
伝承活動班は自分の体験や仮設住宅で交流した方々、地域のおばあちゃんの生きざまなどを盛り込んだ紙芝居を制作した。2学期は9月予定の修学旅行が10月、11月へと延期を重ねた。文化祭が終わって1週間後に修学旅行に行き、そのあと紙芝居を制作した。完成時の充実感は半端ではなかった。
近隣の高田小学校に出前授業に行き、絵本と紙芝居を寄贈した。行きはとても緊張していた生徒たちだったが、帰りの顔は達成感にあふれていた。他の小学校からもオファーが届いている。
災害時要援護者の班は、地域の高齢者に話を聞き、提案にまとめた。今は一人暮らしで寂しいとか、足腰が弱くなって今度津波がやってきたら逃げられるか心配だとか、防災マップをもっと知りたいといった声をまとめ、学年発表会で他の生徒たちと共有した。震災前の陸前高田の宝物を伝承する内容、防災アプリの使い方、災害に備えて高齢者と周囲の人ができる活動をチラシにまとめ、アンケートに協力してくれた方々に配り、店舗にも置かせてもらった。敬老会のお祝いがコロナ禍で中止になり、手紙を送った。
避難所運営班は、震災当時の校長から体験談を聞いた。2,000人近い避難者を受け入れ、避難所運営と学校教育の両立が大変だったという。話をもとに、避難所の在り方を考えた。一人あたり、一家族あたりの専有面積を考慮すると避難所には本来250-300人しか入れないことがわかった。300人が避難したら一人に1日パン1つを配って、4日で備蓄が底をつく。調査した内容をチラシにして配布した。行政による備蓄には限りがあるから、自助、共助が大切だと伝えた。
地元に元気を取り戻そうと活動している班は、町の中心にある「アバッセたかた」(「あばっせ」は地元の言葉で「一緒に行きましょう」という意味)にある中学校の掲示板に壁新聞を月1回掲示している。学校生活の紹介に加えて防災記事も必ず取り入れている。商店とのコラボもすすめている。例えば、本屋では紙袋を廃止し、代わりにお買い上げカードくれるが、そのカードに消しゴムハンコで作ったスタンプを押してしおりとして配ったり、紫外線に弱い人のためにケア帽子を手作ってプレゼントしたりしている。
4.現在の課題と、将来、とりくみたいことを教えてください。
3年活動を続けてよかった、みんながいたからできたと生徒たちは口をそろえる。
10年経ってしばらくは安心だと思い込むのではなく、次の備えが必要だ。あの悲しい体験を繰り返さないために、地域全体で10年の伝承と次の備えにとりくみたい。