津田中学校の防災教育の歴史は長い。ぼうさい甲子園とほぼ同じ歩みだ。受賞回数もグランプリ2度をはじめ、群を抜いている。 生徒たちは、地域を歩いて住民の意見を聞きながら様々な防災活動にとりくんできた。町内防災意識調査を毎年継続し、ミニコミ誌の発行や地域での活動報告、非常食ジャムの配布などを通して自分たちの発見を地域に返している。 幼稚園や小学校への出前授業、避難所体験、マップ作りなどの「定番」にとりくみながら、 昨年から今年にかけては「事前復興まちづくり計画」と「津波避難シミュレーション」をメインの活動に据えている。ふるさと津田の町の日常の備えと復旧、復興を一元的にとらえ、津田山を防災拠点にするアイデアなど5つの具体的な提案をしている。ジオラマを作って視覚化も試みた。 中学生と卒業生、大学、企業の連携が津田中学校の質の高い活動を支えている。
NHKで通学路点検と防災常時携帯品紹介
オンライン活動
事前復興まちづくり案ジオラマ紹介動画の撮影
事前復興まちづくり案ジオラマ紹介動画の撮影
クラウドウォークによる避難経路シミュレーション(徳島大学と協同)

徳島市津田中学校

ぼうさい甲子園と歩みをそろえて15年の活動を蓄積

 津田中学校は、ぼうさい甲子園が始まった2005年度(平成17年度)の前年から防災教育にとりくみ始めた。グランプリに2度輝くなど、受賞歴は多数。積み上げてきた活動は町内防災意識調査や防災ミニコミ誌の発行、幼稚園や小学校での出前授業、校内学習発表会や地域での実践発表、津波避難支援マップの作成、非常食ジャム配布、災害シミュレーションゲーム、事前復興まちづくり計画の提案など、災害への備えから発生時の対応、復旧・復興までを幅広くカバーしている。活動の中心は防災学習倶楽部だ。

事前復興まちづくりを進めたい

 昨年度は、事前復興まちづくりのジオラマを作成した。3月1日に発表会を予定し、地域の方々の意見を聞き、卒業生との座談会をしようと準備していたが、臨時休校で中止になった。ジオラマは防災教室の前の広場に展示していたが、その後、徳島県立防災センターに展示の場所を移した(10月4日まで)。

 休校に入るとすぐ防災学習倶楽部の2、3年生がオンラインで活動したいと学校に連絡してきた。まず、災害時の非常持ち出し品の一覧表も見直した。その後は、保育所と幼稚園への出前授業のシナリオの改良など学校再開をにらんでオンラインで会議を続けた。

 生徒たちはジオラマを多くの人に見てもらいたいと願っていた。そこで、ジオラマを紹介する映像制作に取り掛かった。大学で防災を学んだ卒業生やコンサルタントが力を貸してくれた。まず概要版を作ってYouTubeにアップした。今後、事前復興まちづくりの5つのテーマに沿ってシリーズ化していく。

1.津田城計画
 津田山を標高40メートルラインで削って広域避難場所を作り、物資倉庫やヘリポート、階段、スロープを設置して徳島県・市の防災拠点とする。普段は芝生広場や桜ロードがある憩いの場所となる。被災後も津田に住み続けたい住民のために仮設住宅の建設場所にもなる。

2.ピロティ構造の住宅
 津田の町を襲う津波の高さを考え、1階が駐車場になっているピロティ構造の家を推奨している。

3.E-ロード
 住民の意識調査では津田山に逃げたいが、細い道、ブロック塀、古い家屋の倒壊などへの心配が浮き彫りとなった。「E」の形に見える町内の主要道路を拡充してより避難しやすくする。” Evacuation(避難)” の意味も込めたい。

4.津田山周辺に総合病院と小中学校を建設
 津波災害時にも病院と避難所が機能するよう、小高い津田山周辺にそういった機能を集中しておく。

5.高台の避難所整備
 工場があり昼間人口が多い。働く人も高齢者も障害者も安心して避難できる避難場所、若い人も安心して生活できる施設づくりを提唱したい。コンクリートの高い堤防ではなく、緑地堤防に遊歩道を整備して、日常的に潤いのあるまちづくりを目指す。

コロナ禍のアンケートで分かってきたこと

 これまでのアンケートは生徒が地域を歩いて対話しながら集めてきた。回答者は昼間に在宅している高齢者が多かった。地域のつながりを大切にする(共助)意見が多かった。

今回は戸別訪問ができず、保育園、幼稚園、小学校、中学校で配布して持って帰ってもらい、回答を集約した。保護者盛大はまず自分たちが助かるために行動するという考えが多かった(自助)。事前復興まちづくりに忌憚ない意見も寄せられている。土地や費用の問題、ピロティ構造の家の安全性等の質問もある。保護者世代の意見は、高台の避難所と堤防を肯定していた。津田山を削るのは現実的ではないという指摘もあった。

防災倶楽部のメンバーは地域の全員を救いたいと思っている。自助と共助をどうつないでいくかという新たな課題が見つかった。アンケート結果はミニコミ誌にまとめて配布する予定だ。あわせて、改訂した非常持ち出し品の一覧も配る。

避難シミュレーションで新たな発見

去年、生徒たちが地域住民に避難ルートについての聞き取り調査を行った。このデータを活用して、今年の夏休み明けに約450件のデータを入力して町民全体の避難シミュレーションに挑戦した。すると、生徒の提唱したE-ロードで避難者が集中する場所があることが分かった。大きな避難所への入り口が狭く、ここでも滞留が起こる。津波は40分で到達すると想定されている。普通に歩ければ避難できるが、遠くから避難してくる人が滞留に巻き込まれて津波に追いつかれる危険もある。これを次の動画配信で発表する予定だ。

新型コロナウイルス感染症を視野に入れた避難所運営訓練

感染症を視野に入れた避難所運営訓練を予定している。ただ、今の状況では危機管理課と消防署が応援に来られないという。中学生だけではなく高校生や大学生(卒業生たち)が運営者会議を組織し、いつゴーサインが出てもいいように、内閣府のガイドラインに沿って体制づくりと実施内容の検討に万全を期している。

例えば、一昨年の1泊研修までは床に寝た。去年からのとりくみから今年はミカン箱を使った自作の段ボールベッドを作って快適にしたい。災害時に、備蓄がなくてもショッピングセンターの段ボールを使うことができる。いろんなアイデアを盛り込んで訓練をしたいと考えている。

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