新型コロナ感染症が流行する前、学生たちはフィールドに出て地域・こどもたちと一緒に活動してきた。それが、コロナ禍で突然できなくなってしまった。どうしよう。ネットでやり取りを重ねて、自分たちの得意技を活かした活動を展開しようと考えた。 京丹波町、神戸市の小学校、福井市の山間地の集落、滋賀県のFM・・・いろんなつながりを維持しながら、新たな活動のスタイルを生み出してきた。 こども向けの学習ビデオを100本以上も制作しYouTubeやHPで配信した。山間部の集落には学生と町民の写真や記事を満載したかわら版を届けた。小学生の昼休みの防災放送は学生のビデオになった。町民向けのzoomを使った防災クイズ番組も制作した。 そんな活動が視聴者の関心を集め、新たな展開につながっていく。こども向けのビデオを高齢者や高校生も活用している。対面での活動が制限されている中で、ネットを使った活動が新たな広がりをもたらすことに気づいた。困難な時もポジティブに生きる学生たちだ。
近藤ゼミのメンバー
京丹波で防災ドラマの撮影
神戸の小学校で校内放送の打ち合わせ
えふえむ草津 防災特番をzoom収録
福井氏高須集落で斜面観測

関西大学社会安全学部近藤研究室

フィールドワークができない

持ち味はフィールドワークと発信力だ。ケーブルテレビやコミュニティFMといったメディアとのつながりも強い。フットワークの軽さが武器の学生たちは、神戸、京丹波、滋賀、福井、福島、和歌山など各地のプロジェクトを通して地域住民、学校のこどもたちと向き合い、その声をメディアで発信してきた。

 ところが、新型コロナウイルス感染症の影響でフィールドに出られなくなった。活動が危機に直面した。

動画で支援

 早速始めたのが動画の制作。4月に大学のゼミが遠隔で始まると、最初に、京丹波町の住民向けに、非常持ち出し袋を題材としたビデオを作った。新型コロナウイルス感染症の影響で外出できない方々が多いので、体操も取り入れた。

 それから、こどもたち向けに防災の味付けをした学習動画を作り始めた。

3回生と4回生が国語、算数、理科、社会、図工・家庭の5つの班に分かれてビデオを作った。完成したコンテンツはすでに100を超えているという。

 例えば、都道府県の勉強ができるクイズ。都道府県の地図のシルエットを見て県名を答える。県庁所在地や特産品、名所なども併せて学習できる。漢字の部首当てクイズや熟語の紹介など、こどもたちが楽しく学べるように内容を工夫した。

想定を超えた広がりが生まれる

 作品はすべてYouTubeで限定公開しているが、動画を見た関係者からの依頼で公開範囲が広がっている。

 ある教育委員会から未就学児向けコンテンツの制作依頼が来た。そこで、図工・家庭科班でマジックシアターというシリーズを制作、これが大ヒットした。体操のビデオを見た高槻市内の高齢者施設の職員からは、お年寄り向けにも作ってほしいと頼まれた。さらに、こども向けの防災クッキングのビデオを観た高校生たちが、いまオリジナル非常食づくりに挑戦しているという。

 京丹波町ではケーブルテレビで繰り返し放映してくれた。それを見た学校の先生方が参考にしているという。町内の小学校は近藤研究室のホームページにリンクを貼っている。

防災放送を動画に

 神戸市長田区にある真陽小学校ととりくんできた、昼休みの防災放送の歴史は長い。こどもたちと大学生が台本を一緒に作り、放送を続けてきた。

 ところが新型コロナウイルス感染症の広がりでとりくみができなくなってしまった。そこで大学生たちは、休業中のこどもたちを応援しようと、自宅で勉強できる動画教材の制作と配信を始めた。当時、小学校の教職員は新型コロナウイルス感染症の対応や授業の準備、スケジュール調整に追われていた。だから、大学の研究室と学生が後方支援に動こうと考えたのだ。

 普段の防災放送は音声だけだが、今回は大学生がしゃべる動画にし、ゼミのHPにアップした。真陽小学校では防災版学校だより「防災タイムズ」も毎月発行しているが、そこに動画のQRコードを載せた。こうすれば、いつでもどこでも視聴できる。

 9月、久しぶりに学校を訪問した。コンテンツを見てくれていた教員やこどもたちから感想をもらった。「今度はいっしょに制作してみたいね」。そんな声が寄せられた。

真陽小学校向けの動画もWebを介して広がりを見せている。小学生向けコンテンツだが、お年寄りや未就学児にも活用してもらっている。大学生たちから見れば、従来はひとつのフィールドに向き合う1対1の閉じた活動だったが、今回はそれがどんどんと広がっていろんなフィールドとつながっていくのが実感できるのだそうだ。

かわら版というメディアがつなぐ

 福井市の高須集落でも新たなスタイルで活動を継続している。高須は市内の山間部に位置し、土砂災害の危険区域が多い。40世帯が暮らしている。高齢化率は7割。学生たちは昨年11月を最後に、今年の8月までずっと訪問を控えていた。その間、集落のすべての家庭に配布するかわら版を作って、毎月郵送で送り届けてきた。

 かわら版には去年行ったアンケート調査の結果や住民との活動、住民と学生が一緒に映る写真や学生の感想なども載せた。住民たちは、自分たちの写真が載っているかわら版を楽しみにしているのだという。かわら版を介して世間話に花が咲く。記事を読んで嬉しかったという連絡が、大学の先生宛に寄せられている。

 8月、久しぶりに現地を訪れた学生は、直接会えることの喜びをかみしめた。

遠隔会議システムも続けよう

 フィールド訪問が中心の活動スタイルが、コロナ禍で変わらざるを得なかった。滋賀県草津市のコミュニティFMの番組はスタジオ録音からzoomでの収録に変わった。そのおかげで、遠方の学生が参加しやすくなった。他の学生が収録している様子も簡単に見学することができて刺激になるのだそうだ。京丹波町でもzoomを使って「電気火災」のクイズ番組を制作した。ステイホームの時期、家電の使用機会が増えるからだ。学生が進行役と解答者をつとめ、消防署長が解説者となって事故防止を呼び掛けた。

 遠隔で動画をアップロードすると、どんどん防災の輪が広がっていくことが体感できた。コロナ禍が落ち着いても、対面のプロジェクトとともに遠隔でのとりくみも続けたい。

危機をポジティブに生きる

ある学生がこんな話をしてくれた。

自分は家にじっとしているのが苦手。気持が沈んでいた。でも、手法を変えれば今まで見えていなかったことが見えてきた。別の楽しみ方が見つかった。人生には、状況に応じて対応しなければならないことが多いと思う。今、コロナ禍でこんな体験ができている。強くなれると思って乗り越えようと思っている。

動画教材プロジェクト
http://kondoseiji.main.jp/movie/

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