ぼうさい甲子園初代グランプリ
淡路高校は2005年度(平成17年度)初代グランプリ受賞校だ。地域と連携した総合防災訓練をはじめ、地域の防災意識アンケート、地域の巨大防災マップづくり、絵本や紙芝居を使った幼稚園との連携などにとりくんできた。兵庫県の防災ジュニアリーダー育成講座にも毎年参加し、東日本大震災の被災地にも出かけてきた。ジュニアリーダーでとりくんだアクションプランを作るワークショップで刺激を受け、「何かしなければ」という意識が芽生えたという。そこから毎年新たなとりくみにチャレンジし、発展し続けてきた。
プロ歌手と共同で歌も作った。生徒たちの気持ちを伝え、作曲してもらった。今も合唱コンクールでは全校生が歌っている。
「防災と心のケア」
現在は「防災と心のケア」という学校設定科目で学ぶ生徒たちが活動を引っ張っている。阪神・淡路大震災(1995年)から2年後の1997年度にはすでにスタートしたのだという。2年次の選択履修科目で、今年度は28人が履修している。一年間の学びの前半は阪神・淡路大震災の体験や災害のメカニズムなどの知識習得、後半は毎年違ったテーマを設定しての活動だ。
高校生が語り部に
今年度は新型コロナウイルス感染症による臨時休校が長引いたため、これまでの内容を厳選して実施することとなった。
語り部活動は継続的にとりくんできたテーマだ。1学期に地元の北淡震災記念館(野島断層保存館)の理事長から阪神・淡路大震災の話を聞く。夏休みがあけると、授業実施日の月曜日5・6時間目に科目選択者の中から数人が記念館に出向いて震災を伝える活動を行う。これをローテーションで続ける。科目を履修する全生徒が自分の言葉で震災を伝える活動だ。
今年度も生徒たちはすでに記念館を訪れて阪神・淡路大震災の話を聞いた。長年とりくんできた語り部活動だが、新型コロナウイルス感染症の影響下では、対面での活動を極力減らさなければならず、現在は記念館での活動を保留にしている。コロナ禍が落ち着いたらぜひ再開したいと考えているという。
地域をテーマに防災活動:防災マップと地域アンケート
地域の防災マップ作りにもとりくんでいる。夏休みの課題で自宅周辺の防災マップを描き、2学期には授業で発表会を行う。大きさはB4版。生徒たちの居住地は海沿いから街中、山裾まで様々な場所に広がっている。でき上がった地図も地域性があって面白い。家族の避難場所も多様だ。マップづくりの宿題が家族防災会議につながっているのが手に取るようにわかる。
「語り部」と「地域アンケート」はこの科目の柱だった。ただ、高校生が、高齢者の多い地域の家庭を訪問した時にどう受け止められるかが心配なので、今年は方向性を変えて子どもたちにアプローチしてみたい。
新たな展開:子どもたちと防災活動
これまでも、文化祭でこども向けのお菓子ポシェットづくりのワークショップをしてお母さん方に好評だった。持ち帰ったお菓子ポシェットで家族の間に防災の意識が膨らんでいくはずだ。今年は、牛乳パックを使った耐震のワークショップをしようと考えている。
企業との連携も視野に入れている。小さな子どもたちが自然の中で英語を使って遊び、学ぶプログラムを展開している”Awaji Kids Garden”と一緒にイベントをしようと協議中だ。
淡路の名産品である玉ねぎでハンカチを染め、それを、避難完了を示す「安否札」のように使えないかという案も考えている。このハンカチを地元のこども園や小学校にプレゼントし、高校生が子どもたちに防災を教える出前授業につなげていきたい。
高校生の授業を受けた子どもたちが家に帰って家族と防災話についてし合うというつながりに発展させていきたい。今年度のターゲットは子どもたちだ。
休校前後の動き
- 学年末考査は2日だけ実施したが、後はカットとなった。
- 3月2日を登校日にして事情説明。翌日から休校。
- 入学式は体育館で説明会として実施。3クラスなので「密」にはならなかった。
- 4月10日、一度だけ登校日を設けた。
- 5月、新型コロナ感染症による長期休業中に、NHKの「学ぼうBOSAI」を視聴し、番組をもとに家族で我が家の防災を話し合って、それを学校再開後に発表するという課題にとりくんだ。
- 6月、学校が再開され、「災害と心のケア」の授業も新たな形でスタートした。
- 休校明け、しばらくは教師が校内の掃除、消毒を行った。今は生徒が掃除している。多くの生徒は従来の生活のありがたさを考えているようだ。