大槌高校のとりくみは復興研究会がけん引してきた。昨年度の奨励賞に輝いた「ぼうさい紙芝居」が、今年度、広がりを見せている。生徒自の津波体験を紹介する紙芝居は絵本になり、生徒たちが地域の子どもたちに読み聞かせを行った。県内沿岸部の小学校へも今秋贈呈している。10年目の3.11に向けた地元テレビの特番でも大きく取り上げられる予定だ。子どもの時の体験を今の子どもたちに伝える絵本は、震災を知らない今の子どもたちの心に響く。 定点観測の活動は生徒の人気が高い。支援する神戸大学からの来県ができない中で、生徒たちだけで継続している。このとりくみも紙芝居にする予定だ。 津波体験の絵本を作った生徒たちは高校3年生になっている。震災の体験を語れる最後の世代なのかも知れない。今後、震災体験を持たない生徒たちが入学してくる中で、あの体験をどう語り継いでいくかが大きな課題だ。大槌高校が示す一つの解決策は、体験を絵本として残して読みつないでいくことだ。
今年度の復興研究会集合写真
夏休みに来町した青森市内の高校生に町内を案内しました。(他校交流・町づくり班)
夏休みに町内の小学生に防災紙芝居の読み聞かせをしました。(キッズステーション班)
夏休みに小学生へ防災紙芝居を読み聞かせしました。(キッズステーション班)
定点観測では、町内180カ所の同じ場所同じ地点から同じ角度で撮影しHPで公開しています。(定点観測・防災班)

岩手県立大槌高等学校

復興研究会

 復興研究会。これは岩手県立大槌高等学校が東日本大震災から10年近く継続してきたとりくみだ。「定点観測・防災班」「他校交流・まちづくり班」「キッズステーション班」「広報班」の4つの班に分かれて活動を続けてきた。

 震災時、大槌高校は地域の避難所となった。教職員と生徒が避難所運営を担った。復興過程では生徒たちがまちの区画整理に関するアイデアを出し、新たなまちづくりの方針に関する提言を行ってきた。その活動が今の復興研究会の活動の原点だ。

コロナ禍の休校は短かった

 全国一斉の休校要請の後、3月1日(日曜日)に卒業式を行った。卒業生と保護者、教職員だけの式で、校歌はピアノだけ。3月2日(月曜日)、生徒たちは午前中の任意の時間に登校し、担任と個別に課題や生活の話をした。

 3月3日から休校となった。例年、3月は高校入試があって教職員は入試業務に忙しく、生徒たちは登校しない日が多い。コロナ禍の休校とはいえ生徒達にとって2020年3月は例年とそう大きな違いはなく過ごしたのだろう。

 休校中は民間の教育支援プラットフォーム“Classi” [1] を使って生徒との連絡などを行った。インターネット環境のない生徒とは電話で連絡を取った。

 ある学年は遠隔会議システムを使ってショートホームルームを数回実施した。生徒たちはそれぞれのツールでログインして参加した。

 4月に入り学校を再開した。「密」を避け、マスク着用と消毒を徹底した。4月と5月の2か月はペアワークや声を発する授業は自粛した。体育は普通に行ったし、クラスマッチも実施した。クラスマッチは、「密」を避けるために従来の2日間の日程を3日に引き伸ばして実施した。

 今年度に入って岩手県で休校が実施されたのは4月29日から5月6日までのゴールデン・ウイーク前後だけだった。

コロナ禍でできなかった交流と新たに生まれた交流

 復興研究会の他校交流は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた。これまで交流のあった他県の高校が来県できず、夏休みに毎年実施していた交流は中止となった。

 一方、新しく交流を実施した学校もある。北九州市の高校とはオンラインで交流した。防災を広げるための工夫や取組、直前に発生した熊本の水害の話などをした。

 青森県の高校とは直接会って交流した。この高校では、絵本の読み聞かせを行う同好会がある。青森大学や近隣の高校とも連携している。大槌高校の生徒が、マイプロジェクトという探究活動のとりくみの発表会(岩手大会)で震災体験を描く自作の紙芝居を紹介したところ、青森大学の先生が関心を持って交流を申し込んでくれたそうだ。

震災体験の紙芝居が絵本になった

 昨年度のぼうさい甲子園で発表し生徒の体験を基に作成した紙芝居は絵本になった。生徒達は兵庫県の舞子高校環境防災科へ直接持って行きたいが、コロナ禍では無理なので20冊送った。防災絵本へ関心を持ってくれる人も多く、遠くは沖縄から問い合わせが来たこともあった。また、テレビや新聞の関心も高い。地元テレビから4、5回取材を受け、震災10年の特別番組で放送される予定だ。

 夏休みには町内の保育園や学童で子どもたちに絵本を読み聞かせた。クイズなども取り入れたのでこどもたちはとても楽しんでくれたようだ。地元の大槌学園からも10月の防災月間に復興研究会として紙芝居のオファーがあった。

 秋には、東日本大震災復興支援財団の支援で岩手県の沿岸部にある小学校約60校に絵本を送った。

定点観測も継続

 定点観測の活動は継続している。一緒に活動してきた神戸大学の学生たちは岩手に来られない。そこで遠隔会議システムを使って大学の先生と話をし、定点観測を振り返る紙芝居作成を検討している。3.11に向かって何か発表出来るようとりくんでいく。

絵本を通して震災を語り続けたい

 有志活動で行ってきた復興研究会への加入者が今年度は5割になり昨年度より減っている。まもなく震災から10年を向かえるに当たり文集を作成してもらう予定だ。復興研究会の希望する生徒に、あの時どんな体験をしたか、これからどう生きていきたいかなど、無理はさせず、書きやすい形で書いてもらおうと思っている。体験を書き出す作業そのものが心の整理になる。生徒たちの名前は伏せて冊子にまとめる予定だ。

 ある先生がこんなことをおっしゃった。

 3年前、生徒たちと向き合っていた時、気づいたことがあった。震災の体験について語ることが出来る内容、タイミングは個人によって異なる。語ることが全てだと思わないが語る生徒が少なくなると、継承という視点では難しさを感じた。

 いつか体験を持たない生徒たちが入学してきて生徒全員が記憶をたよりに語れなくなっても、震災の記憶を残していくために、大槌高校は記録、セレモニー、モニュメントの三つの活動にとりくんでいくという。紙芝居や絵本を通して誰もが気持ちを共有できる。みんなの命を守れるまちづくりを進めたいと願う生徒たちらしい伝え方だ。


[1] https://classi.jp

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