「池田高校」「甲子園」と言えば、高校野球を思い出す人が多いだろう。池田高校定時制は、防災で甲子園出場・受賞を果たした。定時制なので、活動は夜間が主だが、時には昼間や土日に地域に出ていくこともある。自分たちでデザインしたうちわや防災ろうそく、マスクケースなどを配布して、防災意識の向上と地域のつながりを呼び掛ける。地域のつながりを生み出そうと誕生した生徒たちの団体は「池定(いけてい)・地域まもり隊」という。活動のエンジンだ。 地域での認知度が上がると、総合的な探求の時間に地域の方々を講師として招けるようになった。危機管理課の職員、地域の歴史に詳しい方だけではなく、地域在住の芸術家とのコラボも始まった。もちろん、地域のイベントでの発表、園児への読み聞かせなど、被災地支援も行う。熊本地震、東日本豪雨災害の被災地にうちわを送って激励してきた。 外国人旅行者への呼びかけ、防災グッズの開発などにも積極的にとりくんでいる。

徳島県立池田高等学校(定時制)

「池定(いけてい)・地域まもり隊」

 受賞には生徒も職員も喜んでいる。今まであたりまえのこととして継続してきた防災のとりくみを評価してもらえてうれしかった。と言うより、驚きの方が大きい。

 東日本大震災が発生した時、生徒・職員でできることを考えた。地域に貢献できる存在になりたかった。「池定・地域まもり隊」を結成して地域貢献活動を始めた。被災地の支援も始めた。

 生徒20人の小規模な夜間定時制高校で、生徒全員がボランティア活動、社会貢献活動に参加している。「池定・地域まもり隊」の隊長は生徒会長が務めている。夕方5時半以降が活動の時間になり、ホームルーム活動と総合的な探求の時間を活用している。時には昼間や土日の活動もあるが、土日にアルバイトをしている生徒が多く無理はできない。基本的に毎週何かをすると決めているわけではない。活動があるときもないときもある。地域の要望を受けてケースバイケースで対応している。

地域との交流を大切に

 地域の自治会や福祉施設、老人施設に生徒たちが製作した「池定・地域まもり隊」のうちわを配っている。文字は書道が得意な生徒が書いてデジタル化した。絵が得意な生徒がマスコットキャラクターを描いた。定時制なのでコウモリのキャラクターだ。

 防災だけではなく、地域をテーマにして学んだ内容を地域のショッピングモールで展示した。学校祭でも展示した。地域にも開いた学校祭だ。今年は、学校祭は開催できたが一般の方々の参加はご遠慮いただいたので地域に開けなかった。

 地域のパトロールにもとりくんでいる。警察と一緒にパトロールするときもある。交通安全、詐欺防止などでも貢献している。

 池田高校は全日制の野球部が有名だが、地元でも定時制は知られていなかった。「池定・地域まもり隊」を結成してから、地道に活動を続けてきたおかげで地域の認知度が上がり、地域と学校の双方向の関係が生まれた。総合的な探求の時間を使った地域学習で、地域の方々に講師を依頼できるようになり、地域の歴史を知る方や自治会の防災担当者、行政の防災関係者、芸術家、書道家等が学校に来てくれるようになった。活動の幅が広がっている。

コロナ禍で苦戦しているが、アイデア満載のチャレンジも

 例年、定期的にやってきている活動以外に、新しいチャレンジも始めた。池田には祖谷渓への旅行者など外国人が多い。外国人にも知ってもらうために英語の先生と一緒にうちわの内容を翻訳して、英語と日本語を併記した。ピクトグラムも付けた。生徒会が中心になって祖谷渓で観光客に配布した。外国人旅行者から激励された。

 防災うちわも進化している。災害時は逆さにしてドアノブ等に引っかけて避難済みを知らせるうちわも作って配布した。

 コロナ禍で地域との交流行事が中止になり、活動の幅が狭まった。従来は、街中に出てうちわや廃油から作った防災ろうそくなどを配っていた。今年はコロナ禍なのでマスクを着用し、消毒をきちんとして距離を取りながらの活動で、制約がある。それでも、短い夏休み明けから活動ができるようになったので、さっそくキャラクターのイラスト入りのマスクケースを作って「感染予防」を呼びかけた。好評だった。

 地域のこどもたちが参加する社会貢献活動体験イベントにブースを構えて防災うちわを子どもたちと一緒に作っていた。今年度はイベントそのものが中止になった。地域の保育所で防災に関する絵本の読み聞かせを行っていたが、これも中止になった。

 昨年の徳島県の定時制通信制美術作品展では手芸部門で、日頃はタペストリーとして飾り緊急時は防災ずきんとして使えるグッズを作って準特選を受賞した。今年度は同じ手芸部門で、古着を使って非常用備蓄品を持ち運びできる巾着を作った。避難時にはシートやブランケットとしても活用できる優れものだ。特選を受賞した。

被災地支援も

 被災地へ支援物資を送る活動にもとりくんでいる。最近では、西日本豪雨災害でボランティア活動をしている方々への応援メッセージを送った。生徒たちが作ったうちわや応援の旗を愛媛県大洲市のボランティアセンターに送った。お礼の手紙と写真を送ってもらった。支援が届いて喜んでいただいた事実に生徒は感激していた。その前の熊本地震の時もうちわを送った。熊本地震の被災地には徳島から阿波踊りの連が訪問し、一緒に踊ったりイベントを開いたりしている。うちわには、熊本と徳島の友好を描いた。

 朝日新聞社の被災地の緑のバトン運動にも参加している。こちらで椿や楓などの苗木を育てて被災地に送る。被災地で植樹してもらう。

活動を通して成長していく

 活動を通して生徒の成長を実感している。人と話すのが苦手な生徒が多い。コミュニケーションが苦手だが、うちわ、ろうそく、マスクケースを配るときなど、地域の人と触れ合う中でコミュニケーションがとれるようになってきた。入学当初は課題を持つ生徒も活動を通して積極的になってきている。

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