学生たちの活動の場は徳島県阿南市の小学校。2011年の東日本大震災をきっかけにして石原先生と阿南市の関係が始まり、2016年から学生たちが参加している。教材開発も先生方がそれを使ってオリジナルの防災授業を行うことを前提にしている。出前授業の後には先生方との研究協議会を持って、常に教材のブラッシュアップ、指導方法の改善を目指している。子どもたちが学んだことを自分の大切な人に手紙で伝える実践も、学生のアイデアから生まれた。 コロナ禍で出前授業ができないかもしれないという状況で、学生たちは先生方だけでとりくめる教材を開発した。コロナ禍が少し収まった11月には、出前授業ができるとのことで阿南市に出向いた。ところが、前日、龍谷大学の別キャンパスでのクラスターが発生する。急きょ、地元の公民館からワーク中心の防災授業を発信した。うまくいったのは、これまでの積み上げによる信頼関係と先生方の努力だと、学生は思っている。
2019年度徳島県阿南市立橘小学校でHUGを用いた授業を行っている時の様子。
2019年度徳島県阿南市立椿小学校で紙芝居を用いて授業を行っている時の様子。
オンラインにて小学校の先生方と研究協議会を行っている時の様子。
2020年度徳島県阿南市立橘小学校にむけてオンライン授業を行っている時の様子。
2020年度徳島県阿南市立津乃小学校にむけてオンライン授業を行っている時の様子。

龍谷大学 政策学部 石原凌河研究室

実践地の学校に背中を押された

 初応募で受賞できたのは驚きだ。素直にうれしいい。石原先生は学生に知らせずに応募したが、学生たちは、活動を先生にも認められたという嬉しさを感じたという。先生が2016年に大学に着任して以来、研究室で徳島県阿南市の小学校での出前授業を行ってきた。そのひとつ、津乃峰小学校の校長先生から、龍谷大学も応募しろと背中を押していただいたのが大きいという。学生は、受賞はうれしいけど、自分たちだけの力では無理、先生が築き上げてきたフィールドがあり、先輩のこれまでの活動があったからこそだと感謝している。

 ずっとフィールドであった阿南市の橘小学校も受賞し、津乃峰小学校も過去にはグランプリに輝いている。今年の授賞式が中止となり、阿南市関係の実践団体で集まれないのが本当に残念だ。

 阿南市とのつながりは、石原先生が大学院生の時に始まる。東日本大震災が発生したその日(2011年3月11日)、先生はたまたま阿南市の市役所で震災に遭遇した。大津波警報が発令されて避難もしたという。ここは南海トラフ地震の対応が急務な地域だ。それから1年間研究して2012年、その成果を地域住民に発表した。その年から今まで小学校での防災授業を継続している。

急きょ、遠隔授業に切り替えて

 今年度は新型コロナウイルス感染症が広がり、阿南市での出前授業ができないという前提で、先生方が防災授業を実施する内容を考えた。防災カリキュラムを開発してYouTubeで限定公開し、URLを先生方に送った。コンテンツはHUG、南海トラフの被害などで、4本作製した。動画を取り入れた授業を先生方に実施していただこうという発想である。先生方とのやり取りを通して、改善に向けたアドバイスをいただいた。

 YouTubeの動画作成で出前授業ができない状況を乗り切ろうと考えていたが、11月に津乃峰小学校と橘小学校が受け入れてくれることになった。ところが、徳島まで行った時に龍谷大学でクラスターが発生したニュースが飛び込んできた。別キャンパスでの発生だったが出前授業前日のニュースでもあり、子どもたち、先生方、保護者が不安になると考え、急きょ、オンライン授業に切り替えた。地元の福井公民館から学校に発信しようという試みだ。橘小学校は避難所運営、津乃峰小学校は液状化が学習のテーマだった。朝、両校の先生方と連絡を取って、わざわざ公民館に来ていただき打ち合わせをした。オンラインでの一方的な発信ではなく、子どもにワークショップにとりくんでもらう授業を予定していた。そこで、学習手順を先生方にお伝えし、教室で実施していただいた。先生方から「熱い思いが伝わった」と評価していただいた。

 両小学校に遠隔システムが導入されたのは夏ごろだ。学生たちとの打ち合わせで応答トラブルやカメラの不具合などを経験し、先生方がそれを乗り越え、授業にも遠隔システムを使うようになったという。その経験が11月に活かされた。

手紙で気持ちを伝える

 児童が授業で学んだことを大切な人に手紙で伝えるという活動も行っている。昨年度卒業したゼミ生のアイデアだという。子どもたちが発信側に立つと防災がもっともっと広がるはずだ。学んだことや思っていることを大切な人に伝え、読んでもらおう、そう考えたのだ。手紙を受け取った人は、大切な子どもたちからの「防災をしよう」というメッセージに心が動く。子どもたちは伝えることによって学んだことが定着する。

先生方との研究協議会で教材、指導法を開発

 今後、2月にオンライン授業を市内の椿小学校、福井小学校で行う。椿小学校は津波から身を守る、津波てんでんこの話を取り入れ、福井小学校は小学生でもできる避難所生活を扱う。

 津波てんでんこは4コマ漫画で教える。1コマ目で津波がやってきて、2コマ目以降で家には家族がいて、主人公は家に帰るのか帰らないでそのまま近くの高台に避難するのか、という2者択一のストーリーを展開しながら「津波てんでんこ」につなげていく内容だ。4コマ目では主人公の行動をグループで話し合う。椿小学校は複式学級の少人数学校で、中学生も参加する。異年齢でグループを組んで話し合う。

 一昨年から橘小学校では避難所運営がテーマになっている。高台にある橘小学校は津波の被害があると小学校が長期的な避難所になる。そこに子どもたちがどう関与していくか。先生方との研究協議会の積み重ねは、6年間を見通した避難所運営の学習カリキュラムに結実した。低学年では地震とは何か、避難所はどんな所かを学ぶ。4年生になると防災学習の時間をたくさんとれるので、避難所運営を詳しく取り上げる。高学年になると、地域の人々や下級生に伝える学習方法も取り入れる。

 学生たちに話を聞いた。防災教育を卒論のテーマにする学生がいる。11月の出前授業が急きょ遠隔実施になった時の、先生方からの「未来を担う若者がここにいる。頼もしい」という言葉に感激した学生たちは、今もその言葉を糧にがんばっている。11月、公民館からの遠隔授業、それもワークショップ中心の活動的な授業に、先生方が教室でとりくんでくださった。その熱意は今も学生の背中を押している。学生たちと先生方がお互いに感化しあいながら、一方通行の、外部に丸投げの出前授業ではなく、協働しながら防災の学びを作り上げている。

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