活動の中心は防災ジュニアリーダー。ブルーベリーを練り込んだ「松の陽だまりパン」の販売を中心に、地域や小学校、企業とのコラボを展開している。地元のテレビ、ラジオの強力なバックアップも受け、地域での認知度、評価は高い。販売イベントでは暖かい応援をいただく。地元公民館での実践発表の機会もいただいた。地域の皆さんの理解と応援を感じている。 7月の豪雨災害では、もともとつながりのあった地元のこども食堂と連携して物資を送った。こども食堂の発信で全国からマイクロバス1台・2tトラック1台分の物資が集まったという。もちろん「松の陽だまりパン」も送った。 昨年度、2度目のチャレンジで賞につながった。 今年度は地元の小学校での語り部活動も始めたい。災害体験を学び、それを子どもたちに伝えていく。メディアの活用と情報の発信にもとりくんでいく。地域で認知され、全国で仲間ができることで生徒たちの活動が継続されていくような仕組みを作っていきたい。
岡山県総社市でのボランティア活動
松の陽だまりパンが2年の歳月を経て商品化!!
高砂市そねこども食堂ようきでの食事をしている様子
高砂市立中央公民館兼伊保公民館での学科間連携
ボランティア・スピリット・アワード2019全国表彰式

兵庫県立松陽高等学校

「総合的な学習の時間」から始めた防災教育

 兵庫県教育委員会の防災教育推進校となって4年目になる。もともと「普通科」の総合的な学習の時間(現在は探究の時間)で防災教育にとりくんできた。1年生の学習は防災の基礎、2年生は減災活動を考えている。防災士の授業も取り入れている。ただ、時間数は少ない。1年、2年とも年に16時間。1月に総合的な探究の時間・課題研究発表会を開いている。

松の陽だまりパン

 「商業科」は、災害食の商品開発を産学連携でとりくみ、「生活文化科」は商品開発や地元とつながった活動を推進してきた。例えば、兵庫県教育委員会主催の「防災ジュニアリーダー育成合宿」に毎年参加し、防災を学び活動を発表している。ただ、今年度は合宿ができず、一日だけの限定開催だったが。

 松陽高校の活動のメインは産学連携で開発した非常食の缶詰パンだ。 「松の陽だまりパン」は2017(平成29)年から開発に挑戦して昨年7月には商品化した。

 2018(平成30)年の西日本豪雨ではボランティア活動を行ったが、生徒たちは被災地では便秘になる人が多いと知って、パンの生地に食物繊維が豊富なブルーベリーを入れることを考えたという。管理栄養士の免許を持つ先生や学校医の助言もいただいた。ブルーベリーはスーパーフードと呼ばれ、食物繊維が豊富なだけではなく、心臓血管機能の向上・がん細胞増殖の抑制にも効果があるという。災害食へのイメージは「おいしくない」だが、生徒たちは焼きたてのような備蓄パンにしようと奮闘した。「松の陽だまりパン」は3年間の備蓄が可能だ。

収益よりもつながりづくり

 今年の販売実習ではマスク、手袋の着用やお客さんとの間にビニールシートを設置するなどの規制があり、試食が出せなくなった。

 販売では、実は、利益は目標としていなかった。ただ、販売実習で利益をあげるよりも公民館での啓発発表などで防災や松陽高校のとりくみに関心を持ってくださる方々を増やすことをめざしている。イベントでパンを買ってくださった方から、公民館での発表を依頼されたこともある。もちろん、プレゼンターは生徒たちが務めた。

メディアの力も

 今年はメディアを通じての発信にも力を入れている。ぼうさい甲子園でグランプリを獲得した関西大学近藤研究室のとりくみに影響を受けた。あのレベルまではいけないが、少しでも近づきたいと思う。

 地元の高砂にはBAN-BANテレビ、BAN-BANラジオがある。取材に来てくれることもある。BAN-BANラジオは週1回、出演させていただいている。地元の方々がとてもよく聞いてくださっているようだ。あるイベントでパンを販売したら、500個があっという間に売れた。「テレビで見ているよ」「おいしいね」という声をかけていただいた。メディアの力を感じている。

こども食堂とのコラボが広がる

 この7月に豪雨災害に襲われた熊本県人吉市にもパンを送った。地元の曽根のこども食堂と連携して活動していたのだが、その活動が神戸新聞の取材を受けた。熊本の被災地に支援物資を送りたいという話をした。連携しているこども食堂が発信源となって全国のこども食堂を巻き込んだ活動に広がった。全国からマイクロバス1台・2tトラック1台分の物資が集まった。曽根と西宮のこども食堂の関係者が届けてくださった。

広がる連携

 ひょんなことから産学連携が広がった。あるイベントで「松の陽だまりパン」を販売していると、地元のトヨペットから声をかけてもらった。温かいパンを試食してもらうためにプリウスの給電機能を使ってコラボしようというアイデアだった。これは好評だった。

 近所の伊保小学校と語り部活動をコラボしようという企画をしている。松陽高校の生徒たちが人と防災未来センターの語り部さんから聞いた話を再構築して小学生に伝えるとりくみだ。対面が難しい場合でも絵本や紙芝居などを通して子どもたちに伝わるようにしたいと考えている。阪神・淡路大震災を体験していない高校生と小学生がつながって、いい化学変化を作り出したい。

コロナ禍の課題とどう向き合うか

 ただ、今は対面が難しい。リモートでできる方法として、YouTubeでの発信も視野に入れている。地元のBAN-BANテレビでドキュメンタリーを撮ってもらおうとも考えている。

 ボランティア=対面と考えている人は多い。そうだと思う。でも今の状況で遠隔での関係づくりがどんな効果を上げられるか、不安もあるがとりくんでいきたい。

継続性の担保

 学校のとりくみは担当者の熱意に頼っている部分が大きい。でも担当者が転勤しても継続できる仕組みを作っていかなければならない。

 今は、宮城県農業高等学校や奈良県立奈良情報商業高等学校との提携も始めた。他府県でも同じようなプロジェクトを進めてもらい、相互に刺激を与え続けて、継続の糧としたい。様々な防災活動をけん引する拠点校をつくる必要があると考えるからだ。

 「生徒たちには発信の技術を身につけて欲しい」と担当の先生は言う。

 「メディアの活用」と「情報の発信」が今年のテーマ。インプットしたものをアウトプットする。そのアイデアが生徒たちから出てくるのが素晴らしい。

休校前後の動き

3月2日月曜日 生徒登校日
5月いっぱいまで臨時休業
 プロジェクトの広報ポスターづくりに取り組む。
 授業の課題は郵送し、回収は登校日で行った。
 週に1回の登校日は1時間程度で、学年ごとに登校日を分けた。
6月学校再開
 第1週は分散登校。
 午前グループと午後グループに分けての登校で密を避けた。
 第3週から通常の学校再開

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