とにかく防災学習プログラムがすごい
「上富田ふれあいルーム」は月に約3回、土曜日に開かれており、そのうち2回が防災をテーマとした活動で、3年生から6年生が参加している。これまで多彩なプログラムを開発、実践してきた。積み上げてきた防災活動は200近い。そのどれもが工作や簡単な調理、遊び、ゲームなどの体験型の活動である。ぼうさい甲子園だけではなく、防災教育チャレンジプランで大賞を受賞したり、各地の防災イベントで実践を発表したりするなど、防災教育、防災活動の世界では有名な団体だ。
少人数・万全の感染対策で再開
「上富田ふれあいルーム」は新型コロナウイルス感染症予防対策により活動場所である児童館が休館となったため、長期休講を余儀なくされた。2月29日を最後に、再開できたのは6月20日のことだ。長期間の閉鎖中、講師は、200近い活動の中から再開後にできそうな活動を精選することに専念した。
昨年は25人もいた参加者が9人にまで減少したがむしろ少人数がいい。
間隔を空けて座り、消毒を実施、マスクを着用、冷房を効かせたまま窓を開けておくなど、万全の感染対策で再開することができた。
工作に使う道具などを一か所に置き、子ども達が持って行く従来のスタイルは、子ども達の机に必要な物を配るように変更した。
ハサミなどの道具は教室が終われば消毒して片づける。
体が触れ合う活動や車座に座っての話し合い、飲食を伴う活動もやめた。
ただ、立ち上がって動き出すと密集しがちになるので、常に注意は必要である。
防災+新型コロナウイルス感染症+SDGs
長い休みの間、講師は防災だけでなく、さまざまな事柄に関連付けた取り組みの事を考えた。
6月の最初の教室はゴミ袋のレインコートづくり。身近にあるものを使って雨を防ぐだけでなく防寒対策もできる。コロナ禍での、標準予防策の学習も行った。ゴミ袋のエプロン、マスク、手袋を身に着けた講師に、どの順で脱いでいけばウイルスの感染を防ぐことができるかを子ども達が考えて指摘するゲームだ。
7月には七夕飾りのペットボトルランタンを作った。中に入れた電池式のLEDキャンドルは停電時の備えになる。
牛乳パックを使ったガラクタ工作は定番となっている。フリスビーや牛乳パックのぽっくり(手で持つ紐付きの下駄)も作った。避難生活には気分転換も必要だ。
8月には「西部劇の防災ガンマンになろう」をテーマに、新聞紙でテンガロンハットを折り、輪ゴム鉄砲や投げ縄で遊んだ。いざという時帽子は熱中症の予防になり、新聞紙を折る技術は、避難所でお皿を作るのにも応用できる。輪ゴム鉄砲は防災〇✕クイズの正解の的に向けて発射した。
カッコよく首に巻いたバンダナはペットボトルホルダーやマスク、包帯としても利用できる。投げ縄では輪が閉まる結び方や救助に必要なもやい結びの練習も行った。
「災害用伝言ダイヤル171」の使い方も練習した。事前に保護者に録音をお願いし、児童館で一人ずつ家族からのメッセージを聞いた。
食品トレーを再利用してネームプレートやプロペラを作る教室もあった。廃プラスチックからSDGsについても少し勉強する機会を設けた。
9月、アルミホイルやアルミ皿を使って消防士の帽子作りをした。地元の消防分署の協力で火事の学習も併せて行うことができた。外に出て、自作の帽子をかぶり、水消火器を使う訓練をした後は、消防車や救急車に乗せてもらうなど、子ども達はめったとない体験をすることができた。この日は消防士7人が参加し、ラジオとテレビの取材も来て、大きな行事となった。
下旬にはトイレットペーパーの芯やペットボトルを使って空飛ぶおもちゃを作り、飛ばして遊んだ。
車中泊体験も実施したい
毎年10月には災害時を想定した「避難所宿泊体験」を行っている。
今年は家族単位の車中泊体験を考えていたが、残念ながら中止となった。
コロナ過では、車中泊も一つの選択肢だ。誰もが最低限の避難グッズを車に積んでおき、ガソリンが半分まで減ったら給油する習慣を身につけておくと災害にも強いはずだ。
今後、一般向けにそういったことを学ぶためのリアルでハードな車中泊訓練を提案しようと考えている。実現すれば面白いのは、絶対に間違いない。
地域の災害の歴史からも学ぼう
上富田には水害の危険もある。周囲の山から富田川に水が集まるからだ。
地域には、人柱の歴史がある。児童館では慰霊祭に参加して、石碑を見て、歴史からも学んでいる。
130年前にも富田川流域で大水害(明治大水害)が起こった。紀伊半島大水害からも、9年が過ぎた。繰り返される災害から、何を備え、どうやって生き延びるかを考えていきたい。
そして今後は、防災だけではなく、もっとSDGsを取り入れたいと考えている。SDGsの掲げた17項目の目標を見ていると発想がどんどん膨らみ、アイデアがあふれていく。