大方高校は、防災委員会と「地域学」を履修する生徒を中心に、全校で地域との防災活動にとりくんできた。オリジナルのHUG(以下「HUG」)を開発して地域住民と一緒に実施し、高齢者と一緒に避難経路を歩いて、安全な避難を提案してきた。保育所や小学校との合同避難訓練なども実施してきた。 新型コロナウイルス感染症による休校中は、生徒たちは地域防災のアイデアを考えたりマスクを手作りしたりして過ごした。休校明けは地域との防災活動をなかなか再開できなかったが、黒潮町の主催する町を元気づけるイベントに参加するなど、地域と向き合った活動にとりくんできた。 夏になると地域住民との「HUG」の実施、町の総合防災訓練への参加、地域住民への暑中見舞い、防災アンケートの実施など、活動をどんどん広げていった。 現在は地域住民の避難をよりスムーズにするとりくみに着手している。その一つが、住民の避難袋を学校に置いておくというアイデアだ。住民とのやり取りを重ねながら、実現に向けて進んでいる。
近隣地区の避難タワーの清掃
生徒防災委員会(学習会)の様子
地域学の生徒が作成した防災クロスワード
生徒が手書きした暑中見舞い
黒潮町総合避難訓練の様子

高知県立大方高等学校

大方高校に避難しよう

 大方高校の防災活動の担い手は学校設定科目「地域学」で学んでいる生徒たちや防災委員会のメンバーだ。

 昨年度、「地域学」の授業で津波の避難検証にとりくんできた。

 津波浸水予想地域には避難タワーがあるが、高台のほうが安全で避難生活を送りやすい。大方高校は地域の避難所に指定され黒潮町の備蓄庫もある。ぜひ高台に避難しよう、そのために個人の備蓄袋を大方高校に置いておこうと地域住民に呼びかけた。

 安全な避難には5分以内に家から出る必要がある。そのためには耐震と家具の固定も大切だ。ところが、地域に出て活動を始めようとした矢先に新型コロナウイルス感染症による長期の臨時休業が始まってしまった。

休校中も地域の安全を考えた

 休校中、登校日を設けたり、郵送や電話、Google Classroomなどで生徒と連絡を取り合ったりしながら、学習支援を続け、5月18日(月曜日)に正式に学校を再開した。

 長期休業中、生徒たちは、新型コロナウイルス感染症という災害で疲弊している黒潮町の復活や感染症と戦っている人のために何ができるのだろうかという、学校から出された探究的な課題にとりくんだ。手作りマスクも作った。

学校再開、できることから始めた

 学校が再開され最初にとりくんだのが黒潮町の「Will~あなたの思いを旗に乗せて~」プロジェクトだ。生徒全員が青い旗にメッセージを書いて黒潮町の入野駅と佐賀駅、隣の四万十市の中村駅に飾っている。

 ただ、1学期はイベントができず、教科の学習中心の変化のない学校生活になってしまったが、生徒たちは学校に通える喜びを感じているようだった。そのためか、学校を休まない生徒が増えている。特に1年生の6割以上が皆勤で、2年生3年生の皆勤率も昨年と比べて倍増している。

 夏には暑中見舞いのプロジェクトを行った。黒潮町には75歳以上の高齢者が約2,000人暮らしている。町役場が高齢者にはがきを出して状況を聞いていたが、返信率11%と低かった。そこで生徒全員で暑中見舞いを書いて、防災に関するアンケートと一緒に交流のあった地区の500人に送った。返信率は約50%だった。住民から、「応援しています」という励ましの返信をいただいたりした。

高台の住民の新たな動きも生まれた

 大方高校の南側の地域住民は高台にある高校に避難してくる。北側の地域は津波の到達しない安全な地帯で、これまで避難訓練とは縁がなかった。7月末に、町役場の要請でこの高台の地域住民と生徒たちが「HUG」を行った。参加した生徒は防災委員会のメンバーでも「地域学」の履修者でもなく、一般の生徒たちだった。昨年度、一般の生徒も「HUG」を体験していたのでそれがよかったのかもしれない。生徒たちは自信もって楽しそうにとりくんでいた。「HUG」を通して、山側の地区の住民から、海側の地域の住民は避難で精いっぱいなので、山側の住民が支援者として頑張らなければという声が上がるようになってきた。

 8月30日には黒潮町合同避難訓練が行われ、生徒たちが授業の一環で参加した。住民は避難タワーの備蓄品の入れ替えを行った。前年度から、学校に地域住民の備蓄袋を置いておこうと呼びかけており、そのために使用する予定の部室を住民に確認してもらった。

 9月になると防災クロスワードを作って町の広報誌で黒潮町全戸に配布した。学校に備蓄袋を置こうという呼びかけのパンフレットも配布する予定。生徒たちはすでに学校に自分の備蓄袋を置いている。今後、住民のための備蓄庫を生徒と地域住民が一緒に整備していこうと考えている。

どんどん前向きに

 生徒たちからは、先輩たちが作った「HUG」にコロナ対応を取り入れたい、電話や遠隔会議システムを使って地域を元気づけたいなど、いろんなアイデアが出されている。新型コロナウイルス感染症は、第2波と第3波と襲ってくるだろう。今後は感染防止をしながら、防災の活動を進めていきたい。

 地域防災にとりくみ始めてから、生徒たちが積極的に動くようになった。タワーの清掃といった作業も嫌がらない。町役場の担当者や地域住民から褒めてもらい、生徒たちのやる気はますます高まっている。1年生の地域学の授業では、「津波から守り、未来に残したいもの」をインタビューする「メモワール」の活動を広げていこうとしている。地域の防災活動のさらなる意欲向上につなげていきたい。小学校へのメモワール出前授業も企画している。

 高知県の生徒アンケートでは、大方高校の生徒たちの「地域貢献」や「活動」の数値が県平均の3倍以上ある。「自分が好き・大切」という項目も前年度よりも上がってきている。

 しっかりした防災の知識は新しいアイデアを生む。今はなかなか人と関われない時期だが、そんな時こそ生徒たちには防災の知識を身につけさせたい。

 いま、防災委員は23人(3年生1人、2年生13人、1年生9人)。活動があるときには防災委員だけではなく「地域学」の生徒も全員参加してくれる。学校全体が、地域と向き合いながら防災活動を進めている。

休校前後の動き

・3月1日 (日)卒業式。保護者は各家族1人。来賓も縮小した。
・3月2日 (月)卒業式の代休。
・3月3日 (火)生徒たちに事情説明し、翌4日(水)から休校。
・4月7日 (火)始業式・入学式
・4月8日 (水)休校
・5月18日(月)学校再開。

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