日本一の防災活動を目指しています!
高知県黒潮町にある佐賀中学校は、山と海に近く、カツオなどの海の幸、しめじやニラなどの山の幸が自慢です。けれども、太平洋に面していることから、大きな津波も繰り返し起こっています。また、政府は黒潮町に34.4mの高さの津波が起こるかもしれないと発表しています。これは10階建てビルと同じ高さです。そのため、佐賀中学校は「5つ」の日本一の防災活動を目指しています。
【日本一「短い」防災活動】
一般的な津波避難訓練は学校や家から高台までを移動します。けれども、東日本大震災のとき、およそ7割の方が屋内で被災しました。そこで、考えたのが日本一「短い」避難訓練です。これは、寝室やリビングから玄関先まで避難する訓練で、屋内避難訓練と呼んでいます。写真のように、私たち中学生が各家を訪問して、その家の方と一緒に玄関までの屋内避難訓練を行い、廊下が段差になっていて危ない場所などを確認しました。この家は玄関先がお店になっていて、たくさんの商品が置かれていました。この家の方は、「居間の扉をガラスではない丈夫なものに変えたい」「店舗スペースの配置を工夫したい」と話してくれました。少しでも避難しやすい環境になればと思います。
【日本一「長い」防災活動】

私たちの中学校では、学校裏山の高台(一次避難場所)から、避難生活ができる小学校(二次避難所)に行くための訓練として、保護者や地域の方々と一緒に4.5㎞を歩く避難訓練を行っています。今年度も11月21日に保護者や地域の方と一緒に行いました。小学校までの道のりを確認することで、事前に地域の方々と何を備えておくべきかを考えることにつながります。
【日本一「近い」防災活動】
私たちは、校区内全ての地区の要配慮者(避難するときにサポートが必要な方)を訪問しています。要配慮者の家を訪問すると、過去の津波体験や、避難する上で不安なことを教えてくれます。昨年度は、親しくなった要配慮者を中学生が避難訓練にお誘いしました。中学生がお誘いすることで、訓練参加率が約33%から約93%にまで向上しました。今年度は新型コロナウイルスの影響で訪問することができなかったので、お便りを出してつながりを深めています。
【日本一「遠い」防災活動】

私たちはメキシコにあるエヴァ・サマノ中学校と合同で、遠地津波を想定した避難訓練も行っています。メキシコで地震が起きると、津波が約20時間かけて太平洋をわたり、黒潮町に遠地津波として到達することを想定した訓練です。エヴァ・サマノ中学校からのビデオメッセージを見たあとに、避難訓練を行ったり、佐賀中学校からエヴァ・サマノ中学校に向けたビデオメッセージを送るなどの活動を行いました。3年前に佐賀中学校と津波避難訓練を実施したことをきっかけに、エヴァ・サマノ中学校でも、防災マップを作成するようになるなど、太平洋を越えて一緒に津波防災に取り組むようになりました。
【日本一「新しい」防災活動】
「南海トラフ地震に関連する情報」、いわゆる『臨時情報』という言葉を聞いたことがありますか。これは、南海トラフ地震が発生する可能性が高まったことを知らせる情報のことで、2017年11月から気象庁で運用されています。しかし、地域の方から、臨時情報が何かわからないという意見を聞き、佐賀中学校・防災委員会で解説ビデオを制作しました。このビデオを、40名以上の地域の方々に見ていただいたところ、「中学生の視点でわかりやすくまとめられているのでよくわかった」「臨時情報が出たら避難したい」という感想を頂きました。「新しい」災害情報を中学生から住民のみなさんにわかりやすく伝えていくことができています。

佐賀中学校は、日本一の防災を目指しています。最後に、ある言葉を紹介したいと思います。「かかりがましい防災」という言葉です。「かかりがましい」とは佐賀の方言で、「おせっかい」という意味です。どちらかというと悪い意味で使われることが多かった言葉です。しかし、最近では「結びつきが強い」という良い意味で、「かかりがましい防災」という言葉を、地域の防災活動の中でよく聞きます。
佐賀中学校の防災の取り組みも、他学年の生徒、地域や役場職員の方々、海外の中学生らとの結びつきが強い「かかりがましい防災」といえます。
たくさんの日本一の訓練を重ねていくことで、様々な人たちと結びついた「かかりがましい防災」をこれからも推し進めていきたいです。