毎日新聞社大阪本社編集局長 鯨岡 秀紀

 オンラインという形になりましたが、全国から大勢の方々に表彰式にご出席いただき、誠にありがとうございます。また、新型コロナウイルス感染症の流行がいまだに続く中、急遽オンラインの準備を整え、表彰式の開催にご尽力いただいた皆様方に厚く御礼申し上げます。

 今年も全国各地のみなさんから多数の応募をいただきました。私も選考に参加させていただきましたが、それぞれ工夫と熱意が感じられるものばかりで甲乙付けがたく、順位を決めるのに大変苦労しました。特に、上位の方々はほとんど差がないと感じました。委員が集まった選考委員会でも、全員が同じ順位を付けたのはごくわずかで、どの応募もレベルが高かったことを示していると思います。

 この地を襲った阪神大震災から既に四半世紀以上が過ぎました。当時、私は西宮市に居住しており、自宅で強烈な揺れを体験しました。地鳴りのようなもので目覚め、すぐに激しい揺れ。これはダメだと覚悟もしました。幸い自宅は倒壊せず、たまたまですが寝ていた部屋にたんす等の家具がなかったことも幸いし、けがもしませんでした。別の部屋にいたら、全く違う結果になっていたと思います。

 その後は被災現場や避難所の取材にあたりましたが、当時の私と同じく、夫婦と子どもの3人家族の方が、私たち家族と同じ川の字で寝ていて亡くなられた現場にも遭遇するなど、非常につらい取材でした。それ以来、被害を防ぐ、少なくとも軽減するには、事前の備えしかないことを胸に刻み、私も微力ながら災害報道に関わってきました。

 阪神大震災をきっかけに日本の防災対策は大きく変わりましたが、みなさんの応募資料を拝見しながら、次の災害に備える取り組みが以前では考えられないほど広がっていることを実感し、力強く感じました。

 ただ、災害は想定通りに起きるとは限りません。しかも、さまざまな要素の中の最も弱い部分、手薄だった部分を突かれ、「想定外」という形で被害が拡大します。季節や発生時刻、その時の天候など、さまざまな要素が絡んで、被害の状況や必要な対応も変わってきます。

 みなさんの目的は、いざという時、家族や友だち、地域の人たちを救うことだと思います。順位を付けて表彰していますが、どの取り組みも不可欠の取り組みです。今後の災害で、みなさんの取り組みが少しでも被害の軽減や被災者の支援につながるよう、さらなる取り組みを期待して、ごあいさつといたします。

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